雨の降る中,小走りに駆けてゆく。そして嫌いな炭酸飲料を買う。空を見上げる瞬きなく,幾つもの水たまりを飛び越える。夜は深いはずなのに静けさだけでは淋しくならない。
一通のメール。「ご希望の商品はメーカー在庫切れの為キャンセルされました。」
そうか。何週か前に頼んでおいたものだ。何を注文していたかも忘れてしまっていた。部屋には読んでいない本が積み上げられ,レコードショップの段ボールやらビニール袋やらが未開封のままで立て掛けられている。決して閑散とはしていない。していないけれども必要のない品物にも生気が漂わない事を見た。
相変わらず何が欲しいか分からない。何が欲しいか分からないという気持ちを初めて知って,これ程までにも―形容のし難い―居心地の悪い気分だとは……,身震いさえ催す。これが言わば“宗教的に”“満たされている”と呼ばれる状態なら平穏なんてくそくらえなんだ。例えば高価なものにかかわらず,何かしらの欲しい物がなければ頑張る気にもなれない。頑張る,陳腐な褪せた言葉に当てはまる通りに,何もかもに自己を取り巻くいずれの環境にも態勢にもにつまりはやる気も起きないと云う事だ。それは憶えた幼い諦念が雛鳥ではなくなったかの様。この状況を打開しようとする意気さえも消失しまっているんだよ。
メモ帳を取り出し,何が欲しかったかを書き出そうとした。だけれどそれはやめにした。この上無く馬鹿げた事に思えたからだ。生きていく為の僅かな金銭を貯める目的はないけれど,それをむざむざ浪費はしなくともいい筈だ。それぐらいの簡単な計算は出来る。
だから何も求めず求められず誰も求めないならそういう生き方に転向しよう,と思い馳せるのは自傷行為にも似ている気がする。昔,世の何も今より知らなかった頃,2003年3月27日に,わたし自身が,『いつも白か黒かで在ることを理想としてきたけれど、やっぱりそれだけでは構成されないんだろう。少しだけのお金と少しだけの知人がいればどこでだって生きれる。』と書いた事をしばしば思い出す。どこでだって生きられるとは今も変わらず思っている。この部屋に有る物や長らく執拗に追い掛けていたものや粗末な知識も不燃で不要な訳なのさ。
炭酸飲料が苦手なのは,喉に痛みを感じるからだ。爽快感なぞ一切無い。痛みが味―と云っても大量の甘味料だけれど―を消し,鼻に抜けゆくガスに涙ぐんでしまう瞬間が殊に憎いからだ。そういう理由でビールも発泡酒も嫌いなのだけれど,ジンジャーエールだけは特別で,そんな事を書くとまるでくるりの“ばらの花”を忘れられないままでいる子の様で,苦笑いしか出来なくなるね。
雨音が響く。白い煙は空に上る。炭酸の泡は知らないうちに弾いて終い。
一通のメール。「ご希望の商品はメーカー在庫切れの為キャンセルされました。」
そうか。何週か前に頼んでおいたものだ。何を注文していたかも忘れてしまっていた。部屋には読んでいない本が積み上げられ,レコードショップの段ボールやらビニール袋やらが未開封のままで立て掛けられている。決して閑散とはしていない。していないけれども必要のない品物にも生気が漂わない事を見た。
相変わらず何が欲しいか分からない。何が欲しいか分からないという気持ちを初めて知って,これ程までにも―形容のし難い―居心地の悪い気分だとは……,身震いさえ催す。これが言わば“宗教的に”“満たされている”と呼ばれる状態なら平穏なんてくそくらえなんだ。例えば高価なものにかかわらず,何かしらの欲しい物がなければ頑張る気にもなれない。頑張る,陳腐な褪せた言葉に当てはまる通りに,何もかもに自己を取り巻くいずれの環境にも態勢にもにつまりはやる気も起きないと云う事だ。それは憶えた幼い諦念が雛鳥ではなくなったかの様。この状況を打開しようとする意気さえも消失しまっているんだよ。
メモ帳を取り出し,何が欲しかったかを書き出そうとした。だけれどそれはやめにした。この上無く馬鹿げた事に思えたからだ。生きていく為の僅かな金銭を貯める目的はないけれど,それをむざむざ浪費はしなくともいい筈だ。それぐらいの簡単な計算は出来る。
だから何も求めず求められず誰も求めないならそういう生き方に転向しよう,と思い馳せるのは自傷行為にも似ている気がする。昔,世の何も今より知らなかった頃,2003年3月27日に,わたし自身が,『いつも白か黒かで在ることを理想としてきたけれど、やっぱりそれだけでは構成されないんだろう。少しだけのお金と少しだけの知人がいればどこでだって生きれる。』と書いた事をしばしば思い出す。どこでだって生きられるとは今も変わらず思っている。この部屋に有る物や長らく執拗に追い掛けていたものや粗末な知識も不燃で不要な訳なのさ。
炭酸飲料が苦手なのは,喉に痛みを感じるからだ。爽快感なぞ一切無い。痛みが味―と云っても大量の甘味料だけれど―を消し,鼻に抜けゆくガスに涙ぐんでしまう瞬間が殊に憎いからだ。そういう理由でビールも発泡酒も嫌いなのだけれど,ジンジャーエールだけは特別で,そんな事を書くとまるでくるりの“ばらの花”を忘れられないままでいる子の様で,苦笑いしか出来なくなるね。
雨音が響く。白い煙は空に上る。炭酸の泡は知らないうちに弾いて終い。