2006年04月

猫,逝く。

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猫,逝く。9歳。

その体にはまだ温もりが残っている。
彼が好きだった玩具も一緒に入れてあげる。

ここ数日,彼は口元から血を垂らし,小便もトイレで出来ずに漏らし,水を飲むのさえやっとだった。

彼は二度,体をのけぞらせ嘶きをした。
一度目は母が見た。
二度目は私も見た。
きっとそれが最後だった。

小さな亡骸。白い毛皮は所々錆びた鉄色。耳は真っ白。血管の筋は引いた様だ。

彼はやんちゃな猫だった。
悪さをするのは決まって彼だった。
駄菓子の綿パチをパチパチ鳴らせて食べた。そんな猫は今まで飼った事が無かった。

最初の人間が罪を犯し,後の人類に死と病をもたらしたのであれば,
何故,畜生にも動物にも死と病があるのか。
何故,その疑問を解けない。

これからはもう,冷蔵庫にまぐろの切り身は入っていないのだろう。
彼が食べたい時にいつでも食べられる様,毎日買っておいた。

あなたを抱く。

黄砂のまほろ

まほろの大地に黄砂が吹く。吹き上がった嵐の中で,私と僕が,僕と私が手を振り合う。そしてすれ違う。その両者が混沌としてゆく時,意識はおもむろにブラックホールに向かう。ブラックホール。そうだ,ここのどこかにブラックホールというものがあるらしい。吐き出されるのはホワイトホールだったか。
もし君と,光さえも吸い込まれる大きな暗がりに入ってしまったとしたら,僕達は何を持って互いに存在を確認し合うのだろう。艶やかな吐息も流れる鮮血も感じ取れないならば手を握りしめるしかないのだろうか。そんな事を思って眠りに入った。

君からのスケッチブックは何で埋め尽くされているのだろう。私の写真は何を写し撮るのだろう。骨まで生きたいならば,君の首筋に噛み付く事だっていとも容易い気がするさ。

笑顔も悲惨さも全てがまほろの大地にあるならば,僕は僕のままでゆくよ。だからいつか再会した暁には僕の髪の毛を撫でてほしい。そして沢山の話をしてほしい。私は僕を背負って君に貪欲。そうして再び目を瞑る。ブラックホールの中の灯火は僕達が作るのか。

面倒くさい

その情欲に,肉欲にただ身を任す事の面倒臭さを知っているので,ベッドに横たわった肉体には何もしない。ある一定の年齢が来らば『初対面である人物との性交渉は怖いものではない』という事に気付くのであるが,それを知っていたとしてもそれ自体をはるかに越える面倒臭さはとても厄介なものだ。という事を電話で話したりする。
春の気候に今年も見事に追いやられている私だけれど,最終的に行き着く所はやはり生と性の様で。笑えないぐらいに問題に真摯に取り組んでいるんだけどな。ねえ,君。仮にも若人が,まだ二十代の人間が,「死ぬかセックスをするか」で眼差しがギラギラしているのも素敵だと思うよ。いや,実際,引きこもってて良かった,と思うのはこういう瞬間だったりする。誰かと関係したいと思う事すら面倒になっているという事。
男と女はどっちが面倒くさいんだろうね。女の不利点は,簡単に相手が見付かる事に楽はあってもその相手との今後の距離が重要 (換言すれば,この部分にこそ,面倒臭いものが多く含まれているという事実)になってくる気がしないでもないよ。
面倒くさいので,気が狂うという事も面倒くさいので,そういう体勢は諦念を呼び込むのだろうなと予想しつつ,今年の春は入院ではなくいよいよ失踪か,と自嘲す。まあ今世では既に遊女であり売女であり高尚なものとは程遠い人間であるからして,また何処かへ渡り鳥の様に行きたいわと羽をふるふると震わす。鳴きはしない。おし。

だけれど全てが面倒くさい。それがループ。それだけが。

紡ぐIとI

th_060409_0007_001.jpg何かを考えているよりは何かを考えさせられている方が多い。その限られた時間の中で老朽してゆく細胞核と一緒に,私にとって特別であり人間として不変的なそれに心を奪われる事は,ようやく,『一つの平安』ではないのか,と,然るべく思える様になった。ここに到るまで,さほど道程は長くはなかったが,時間こそが縛られる無限であったのは確かであった。結論に達するまでの過程と飛躍の違いを知る事が出来ずに,歪曲させた自我。理解してくれているだろうという傲慢な押し付け。コミュニケーション能力の欠如は性質柄という問答無用の言い訳用意。最後までとっておくのは自己防衛本能論。何かが巧妙に混ざり,融解し合い,変形し,増殖し,執念にかられた眼差しまでもを懐に入れておくのはもうやめにしよう。 続きを読む

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